直島在住の山根光惠さんより「コロナ禍でもアートは変わらない」を寄稿いただきました。

山根さん(大津高 昭和37年卒)は東京在住の時に、築地西本願寺で浄土宗本願寺の布教使になられました。

現在は岡山県玉野市に近い、香川県直島にお住まいです。直島はベネッセコーポレーションが

力を入れ 草間彌生さんの「赤カボチャ」や「黄かぼちゃ」を初め野外彫刻品が設置され

安藤忠雄さん設計の「地中の美術館」など有名なスポットになっています。

日本子守唄協会(現在ララバイ協会)初代会長の西舘好子様との交流から機関紙「ララバイ通信」

に執筆されております。その中から「コロナ禍でもアートは変わらない」を寄稿頂きました。

リレーコラムでご覧ください。

 

「コロナ禍でもアートは変わらない」

      南無庵 庵主 山根光惠

今年の4月から、直島を中心とした第5回目の瀬戸内芸術祭が始まった。

春、夏、秋、と会期は3期にわかれ、オープニングは建築家の三分一博志氏が設計した

直島ホールにて、直島の伝統芸能である「女文楽」上演を皮切りとし、芸術祭の幕が開いた。

 芸術祭は、3年前からの計画ではあったが、何しろコロナのせいで予想できない事態が起こり、

外国人アーティストは来日もままならず、展示される作品の完成自体、遅れに遅れたようである。

しかし、コロナで閉塞感を長く味わった住民にしてみれば、3年に一度のアートの祭典で、

にぎわいが欲しいという切実な想いもあったため、何とか無事に春会期が開催できたことに

ほっとした人も多いようであった。

 前回までは外国の人の観客がたくさん訪れたが、今回はまったくいない。

しかし人が少ないため、これまでになくじっくりと作品を味わうことができた、ともいえる。

瀬戸内芸術祭は瀬戸内の島々とそれぞれに縁を持ったアーティストたちに島の住民も関わり、

一緒に作品をつくりあげ、それを観客に見せるというものであり、その参加意識も味わいの深い

ものがあり、人気が高い。

 直島ではこの度、新しい施設や作品が登場した。

その中では特に「杉本博司ギャラリー 時の回廊」の中に置かれた作品『硝子の茶室「聞鳥庵』が目を引く。

ホテル「ベネッセパークホテル」内の庭。その芝生の中に小川を作り、その先にガラスのお茶室ができている。

小川の流れは、茶室の空調の役目を果たしているのかもしれない。

ガラスの外からは中が丸みえ中でお茶を味わうと、小川のせせらぎと瀬戸内の海、山の風景が楽しめるのだろう。

芝生の緑は、じゅうたんに見立てているのだろうか?

実際にそのお茶室に入るというよりは、ホテルのラウンジから、そのガラス張りのお茶室を眺めてお茶や

お菓子を味わって、そのガラスの茶室の中でお茶をいただいたら、どんな味わいなんだろうと推察することを

意図した作品のようだ。

 もうひとつ注目なのが、新たに誕生した「ヴァレーギャラリー」という施設で展示されている草間彌生の

インスタレーション作品『ナルシスの庭』だ。祠のような空間や、小さい池の中に、無数のミラーボールが

しきつめられ、そのミラーボールは、自然の風で常に動いている。それらのミラーボールを見ると、

一つ一つに自分の姿が映っている。それにどんな意味があるのかを自分で好きなように考え感じるのが、

現在アートなのであろう。

 

 

 

 

 

 

 春会期が始まる前に、周辺のごごみ拾いのボランティアを兼ねて、友達と作品を観にいった。

昔、東京で勝鬨橋のすぐそばのマンションに住んでいたころ、日曜日の朝など、人通りの少ない時に

勝鬨橋のごみ拾いをよくしたものである。その思い出もあって、直島に来てからも、いつもごみを拾っている。

そうするうちに友達ができて、芸術祭が始まる前に周辺のごみを拾いましょうと一緒にいった。

取りにくいところにあると、手をのばしたり、傾斜のところでは足を広げたり伸ばしたり、

「これこそ年寄りのためのリハビリだね。」と楽しくなってくる。

けがをしないよう程度に遊び半分でのごみ拾い。

何でもどこでも、楽しいことはある。

                                        合掌